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彼と私の7日間

≪①日目≫


「秋月、秋月だよな?」
その日の朝から日野君の様子がおかしかった。
「そうだよ、何言ってんの?」
「いや……何でもない」
そう言いながらも日野君の目は涙がにじんでいた。
「なんかさ、変な夢見てさ。ちょっとブルーなだけ」
「ふーん」
数日前に「なんとなく付き合う」ことになって朝一緒に学校に行くだけなのに、何か大事があったように振る舞う日野君がわからなかった。見た目も中身もごく普通。普通の私にふさわ

しい普通の人。あまり変な行動をするなら自然に離れてみようと思った。



≪②日目≫


それから数日が過ぎても、日野君の様子は変わらなかった。どこか抜けたような印象がすっかり消え、気が付くと遠くを見つめていたり、時折泣き出しそうな顔をしたりと何か心配事が

あるような気配を見せるのだ。
「何か思いつめていることでもあるの?」
「別に……どうせ信じてくれないだろうし」
「言ってみないとわからないじゃない。それに……」
それに一応「彼女」だし、と言いかけて日野君の顔を見る。
「それに……何だよ」
「何でもない」
「そうか。じゃ、明日、明日全部話す」
それだけ言うと日野君は私の前からいなくなった。
「明日、ね……」



≪③日目≫


ところが、その「明日」は来なかった。
見慣れたはずの天井が高くなっていて、学校の制服もなかった。あったのは赤いランドセルと、新品同然の学習机。
「早く起きないと、学校に遅れるわよ?」
部屋に入ってきた母親は、少し若かった。
(まだ夢を見ているのかな……)
まるで私が、10年前に戻ったようだった。
(もう少し寝れば、目が覚めるかな……?)
ところが、夢が覚めることはなかった。
まるで10年前のようではなく、本当に10年前に戻っていたのだ。
(日野君は、どうしたんだろう……)
自分の身の上も不安だったが、日野君の話も気になっていた。
彼は一体何を伝えたかったんだろう。



それからの毎日は生きている心地がなかった。
全てが一度見た光景で、これから何が起こるかわかっていたからだ。
友達と喧嘩をしたことも、祖母の死に目にあえないこともわかっていたが、元の私に戻れるかどうか保証がなかったので同じようにやり過ごした。
「秋月さんは大人っぽいね」
いつも同じことを言われたが、私は悲しみを抑えて笑うことしかできなかった。
同じ人生を2度繰り返す孤独は、誰に言っても信じてもらえないだろうから。
そして私は10年待った。日野君に会って、「明日」の話を聞くために。



≪④日目≫


いつの間にか、10年が過ぎていた。
私にとっては10年前と同じように、「なんとなく」日野君と付き合うことができた。
そして、やはり日野君は悲しそうな顔をして私の前に現れた。


「秋月、秋月だよな?」
その日の朝から日野君の様子がおかしかった。
「そうだよ、何言ってんの?」
「いや……何でもない」
そう言いながらも日野君の目は涙がにじんでいた。
「なんかさ、変な夢見てさ。ちょっとブルーなだけ」
「心配事があるなら、何でも言ってよ」
私にとって10年前に聞きそびれたことを、少しでも早く聞きたかった。
「じゃあ、明日話すよ」
「明日じゃ、遅いの!」
思わず彼の腕を掴んでしまった。その時の彼の顔と私の顔は、同じ表情をしているようだった。
「……この展開は、初めてだな」
彼は力なく笑った。
「ねぇ、何が気になっていたの?」
「時間ループって、信じるか?」
その言葉を聞いた瞬間、彼の一日で老け込んだような表情の理由を悟った。


彼も、繰り返していたのだ。


「うん、信じるよ……私も、だから」


日野君は何も言わなかった。
「同じ人生を何度もやり直す」なんて、誰も信じてくれないから。
ただ、黙って手を握ってくれた。


その日は、学校へ行かなかった。



≪⑥日目≫


それからわかったことが、幾つかあった。
日野君は27歳から17歳を繰り返しているということ。
これでもう4回目だということ。
そして私も、17歳からまた7歳に戻ってしまうということ。


そして私の記憶と日野君の記憶が重なるのは、一週間だということ。
私の望んでいた「明日」は、おそらく永遠に来ないだろうということ。
日野君は私の「明日」については何も教えてくれなかった。
「どうせ見えない未来なら、知らないほうがいい」とのこと。


そして私は3度目の10年間を過ごした。
時間の流れに置いて行かれるような孤独を、日野君に会うという未来だけを頼りにやり過ごした。


「秋月、秋月だよな?」
その日の朝から日野君の様子がおかしかった。
「そうだよ。今度は、覚えてるよ」
「そうか、よかった」

今度は私から手を握った。この瞬間のために、10年間過ごしてきたようなものだ。
「うん」
それから過ごす一週間だけが、私の中で生きた時間だった。

それが終わると、また私は「7歳」に戻らなければならない。
そして彼も、私のいない10年間を過ごさなければならない。

10年間は、短いようでとても長い。



≪⑦日目≫


もう何度同じ人生を繰り返したかわからない。
生きた時間だけを数えれば、きっともう何百年も経っているだろう。
それでも私は17歳から年をとることができない。
彼も、27歳から先の未来を知ることができない。

それでも、ただ一週間のためにループを止めることができない。


また出会って、別れてのためだけに私たちは10年を過ごす。
孤独に回る人生でも、二つが重なる時があるというだけで、回り続けることができる。


もう日野君は、朝から様子がおかしくなることはない。






金環日食というワードから構想15分なのですみません。



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コメント

非公開コメント

1. どうもでございます!

zero-moon0さんのBLOG読みました☆

2. 無題

お久しぶりです

流石ですね…
また引き込まれてしまいました

もし出版されることがあったら必ず知らせてくださいね
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